今回は「住宅性能表示」より「高齢者への配慮」の中から特に「階段の安全性」について整理してみました。

「高齢者への配慮」の項目は、【フラット35S】の対象要件にもなっている為、ユニバーサルデザインを目指している企業さんには、より付加価値をつけられるかと思います。

各等級の水準について

  • 等級1:建築基準法を満たしたもの
  • 等級2:高齢者等の移動のための基本的な措置
  • 等級3:高齢者等の移動及び介助のための基本的な措置
  • 等級4:高齢者等の移動及び介助のしやすさに配慮した措置
  • 等級5:高齢者等の移動及び介助のしやすさに特に配慮した措置

※等級が上がるほど、階段勾配が緩くなります。

等級1(建築基準法)

①勾配の基準

  • 勾配≦23/15(56.89°)
  • 蹴上げ≦23cm,踏み面≧15cm以上

②手すりの設置基準

  • 階段には、手すりを設けなければならない。
  • 階段及びその踊り場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。

等級2・3

①勾配の基準

  • 勾配≦22/21(46.33°)
  • 55cm≦蹴上げ×2+踏み面≦65cm
  • 踏み面≧195cm

②蹴込みの基準

  • 蹴込み≦3cm

③回り階段の取扱い

  • 回り階段の部分で、次のa~cのいずかれに該当する曲がり部分には、①の寸法の規定が適用されません。

(a)
90°の曲がり部分が下階の床から3段以内、かつ、全て30°以上となる部分

 

(b)
90°の曲がり部分が踊り場の床から上3段以内、かつ、全て30°以上となる部分

 

(c)
180°の曲がり部分が、60°・30°・30°・60°の順の4段となる部分

  • a~cに該当しない場合、曲り部分における①の各部の寸法は、踏み面の狭い方の端から30cmの位置における寸法とします。

 

④手すりの設置基準

  • 片側(勾配が45°を超える場合(*1)は両側)に手すりを設置
  • 踏み面の先端からの高さ70cm~90cmに設置(ただし、ホームエレベーターを設置する場合は勾配にかかわらず片側で設置高さも問わない)

(*1):回り階段の部分で勾配の基準が適用されない曲がり部分を除く。

等級4

①勾配の基準

  • 勾配≦6/7(40.60°)
  • 55cm≦蹴上げ×2+踏み面≦65cm
  • 踏み面≧20.3cm

②蹴込みの基準

  • 蹴込み≦3cm
  • 蹴込み板を設置(*1)

 

③階段形式の基準

  • 以下のa~cの階段形式を用いない。

a
回り階段(台形や三角形などの形状の踏面を含む階段)など
安全上問題があると考えられる階段形式

 


最上段の通路等への食い込み

 


最下段の通路等への突出

 

④手すりの設置基準

  • 片側(勾配が45°を超える場合(*2)は両側)に手すりを設置
  • 踏み面の先端からの高さ70cm~90cmに設置

 

(*1):ホームエレベーターが設けられている場合等は等級2・3の基準を適用する。

(*2):ホームエレベーターを設ける場合、日常生活空間(*3)外にある階段で、等級3の階段を満たす場合を除く。

(*3):

  1. 玄関(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  2. 便所(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  3. 浴室(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  4. 脱衣室(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  5. 洗面所(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  6. 特定寝室(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  7. 食事室(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  8. 特定寝室と同じ階にあるバルコニー(特定寝室が接地階にない場合のみ)(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  9. 特定寝室と同じ階にある全ての居室(居間、台所、寝室、書斎、子供室等)(高齢者等の利用を想定するもの一つ)
  10. 1~9を結ぶ経路(高齢者等の利用を想定するもの一つ)

等級5

①勾配の基準

  • 勾配≦6/7(40.60°)
  • 55cm≦蹴上げ×2+踏み面≦65cm
  • 踏み面≧20.3cm

②蹴込み・踏み面・段鼻の基準

  • 蹴込み≦3cm
  • 蹴込み板を設置(*1)
  • 踏み面にすべり防止のための部材を設ける場合は、踏み面と同一面とする
  • 踏み面の先端と蹴込み板を勾配60°以上90°以下の面で、滑らかにつなぐ形状とするなどの措置を行い、段鼻を出さない(*1)

③階段形式の基準

  • 等級4の③と同じ

④手すりの設置基準

  • 両側に手すりを設置(ただし、勾配が45°以下(*2)で、かつ、ホームエレベーターが設けられている場合は片側でよい)
  • 踏み面の先端からの高さ70cm~90cmに設置

(*1):ホームエレベーターが設けられている場合等は等級2・3の基準を適用する。

(*2):階段が等級3の基準を満たす場合を含む

 

まとめ

等級が上がるほど、ユニバーサルデザインとしての質が上がっていき、世代を超えた住み良さを生み出すことが可能となっていきます。

人生100年時代を迎えるにあたり、健康寿命を延ばしたり、自立した生活を長く送っていく上で、大切な要素になってくるかもしれませんね。

※出典:「木造住宅のための住宅性能表示」