近年、住宅の省エネ性能や快適性が重視される中で、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」と「HEAT20」という2つの基準が注目されています。
どちらも高性能な住宅づくりに関わる指標ですが、それぞれの目的や仕様には大きな違いがあります。
本記事では、ZEHとHEAT20の違いについて、機能面、仕様、予算の観点から解説します。
1. ZEHとHEAT20の基本的な違い
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?
ZEHとは、住宅で消費するエネルギーを太陽光発電などで創り出すことで、年間のエネルギー収支をゼロにすることを目指した住宅のことです。経済産業省が推進しており、補助金制度も整備されています。
ZEHの特徴:
- 高断熱化+高効率設備(エネルギー消費を抑える)
- 太陽光発電などの創エネシステムの導入
- エネルギーマネジメント(HEMSなど)による効率的なエネルギー利用
HEAT20とは?
HEAT20は、【一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会】が定めた住宅の断熱性能基準です。
室温(NEB)、エネルギー(EB)といった二つの指標をもとにした「住宅シナリオ※1」を実現することを目指していて、快適性と省エネ性を向上させることを目的としています。
※1:住宅シナリオと外皮性能水準 | HEAT20【トップ】/2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会公式サイト
HEAT20の特徴:
- 断熱性能に特化(創エネ要件はなし)
- G1・G2・G3の3段階の基準(G3が最も高性能)
- 冬季の室温を快適に保つことで健康・快適性を向上
2. 機能面の違い
項目 | ZEH | HEAT20 |
目的 | エネルギー収支ゼロを目指す | 室内の快適性と省エネを向上させる |
断熱性能 | 一定基準を満たす必要あり | G1・G2・G3と3段階の高断熱基準 |
創エネ設備 | 必須(太陽光発電など) | 不要 |
エネルギー管理 | HEMSなどの導入が推奨 | 特に要件なし |
ZEHはエネルギーの「創る・減らす・管理する」という考え方を基にしており、断熱性能だけでなく創エネと省エネのバランスを取ることが求められます。
一方、HEAT20は快適性を重視し、且つ、エネルギー消費を抑えるために高い断熱性能を確保することが主な目的です。
3. 外皮性能基準の比較
ZEHとHEAT20の外皮性能基準(UA値)の違いを表にまとめました。
地域区分 | ZEH基準(UA値) | HEAT20 G1基準(UA値) | HEAT20 G2基準(UA値) | HEAT20 G3基準(UA値) |
1地域 | 0.40以下 | 0.34以下 | 0.28以下 | 0.20以下 |
2地域 | 0.40以下 | 0.34以下 | 0.28以下 | 0.20以下 |
3地域 | 0.50以下 | 0.38以下 | 0.28以下 | 0.20以下 |
4地域 | 0.60以下 | 0.46以下 | 0.34以下 | 0.23以下 |
5地域 | 0.60以下 | 0.48以下 | 0.34以下 | 0.23以下 |
6地域 | 0.60以下 | 0.56以下 | 0.46以下 | 0.26以下 |
7地域 | 0.60以下 | 0.56以下 | 0.46以下 | 0.26以下 |
8地域 | 0.60以下 | – | – | – |
※ UA値(外皮平均熱貫流率)は数値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
4. 仕様の違い
ZEHの仕様要件
- 断熱性能:地域ごとに定められたUA値基準をクリアする必要あり
- 設備:高効率給湯器、LED照明、エネルギーマネジメントシステム(HEMS)などの導入が求められる
- 創エネ:太陽光発電システムの設置が必須
HEAT20の仕様要件
- 断熱性能:
- G1(全体的にZEHより高断熱)
- G2(より快適で高断熱)
- G3(国内最高レベルの断熱性能)
- 設備:特に指定なし(断熱性能とNEB・EBが基準)
- 創エネ:特に要件なし
HEAT20は、太陽光発電の設置義務はありません。
しかし、より高性能な断熱材やトリプルガラスなどを用いることで、冬でも室温を安定させ、冷暖房の負荷を大幅に低減できます。
5. 予算の違い
項目 | ZEH | HEAT20 |
初期費用 | 高め(太陽光発電やHEMS導入が必要) | 断熱性能のレベル次第(G3は特に高コスト) |
ランニングコスト | 低め(創エネによる電気代削減) | 低め(冷暖房負荷の軽減) |
補助金 | あり(ZEH補助金、自治体補助など) | なし |
ZEHは初期費用が高くなりがちですが、補助金の活用や光熱費の削減により長期的なメリットが期待できます。
一方、HEAT20は断熱性能のレベルによって費用が異なり、G3レベルになるとコストが大幅に上がる可能性があります。
5. どちらを選ぶべきか?
ZEHが向いている人
- 太陽光発電を活用し、ランニングコストを抑えたい
- 補助金を活用して省エネ住宅を建てたい
- HEMSなど最新の設備を導入し、エネルギー管理を重視したい
HEAT20が向いている人
- 冬の寒さが厳しい地域に住んでいる
- 断熱性能を最優先し、快適性を重視したい
- 太陽光発電よりもパッシブな省エネ手法を重視したい
まとめ
ZEHとHEAT20は、どちらも高性能住宅を実現するための基準ですが、ZEHはエネルギー収支をゼロにすることを目的とし、HEAT20は断熱性能向上による快適性を追求する点が大きな違いです。
どちらを選ぶかは、住宅の立地条件や住まい方の優先順位によります。
自分に合った基準を選び、長く快適に暮らせる住宅づくりを目指しましょう!
参考1:住宅シナリオと外皮性能水準 | HEAT20【トップ】/2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会公式サイト